1.まず「どんな店を開くのか」を具体的にする
最初に決めたいのは、店名や内装ではなく、事業そのものです。
どんな料理を提供するのか、客単価や席数、営業時間、従業員数、テイクアウトの有無などを具体的にします。
そしてもう一つ重要なのが、経営者本人が何をするのかです。
「自分は調理もする」という計画自体が問題なのではありません。ただし、「経営・管理」は、事業の重要事項の決定や事業の執行など、経営者として実質的に事業へ関与することが前提です。本人が厨房に立ちっぱなしで、調理や接客が仕事の大半になり、経営活動がほとんどないという状態には注意が必要です。
2.物件は契約前に保健所へ相談する
飲食店では、物件選びが非常に重要です。
「駅から近い」「家賃が安い」という理由だけで契約するのはおすすめできません。
大田区では、工事着工前に店舗の設計図などを持参して保健所へ事前相談することが案内されています。施設ごとに食品衛生責任者を置く必要もあります。
そのため、
物件候補を探す
→ 保健所に事前相談
→ 必要な設備を確認
→ 契約・内装工事
という流れが安全です。
さらに、物件については「飲食店として営業できるか」だけでなく、「経営・管理」の事業所としても問題がないかを確認する必要があります。
3.会社設立・資金準備は「経営・管理」を見据えて行う
2025年10月、「経営・管理」の許可基準が大きく改正されました。
法人の場合、現在は原則として3,000万円以上の資本金・出資総額が必要です。ここは特に誤解が多いところです。
法人の場合の3,000万円は、内装工事費、家賃、従業員の給与などを合算して3,000万円になればよい、という意味ではありません。法人では資本金または出資総額が基準になります。
一方、個人事業の場合は、事業所の確保、職員の給与1年分、設備投資経費など、事業のために実際に投下されている総額で判断されます。
また、1人以上の一定の常勤職員を雇用することも必要です。
この「常勤職員」は誰でもよいわけではありません。日本人、特別永住者、そして「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の在留資格を持つ外国人などが対象で、留学生や「技術・人文知識・国際業務」、特定技能などの外国人は、この要件の常勤職員として数えることができません。
さらに、日本語能力については、経営者本人または常勤職員のいずれか一人が、日本語教育の参照枠B2相当以上の能力を有していれば要件を満たします。経営者本人が日本語に堪能でなければならない、ということではありません。
4.事業計画書にも専門家の確認が必要
「経営・管理」の申請では、事業計画書について、具体性・合理性・実現可能性などの確認を受ける必要があります。
施行時点で、この確認を行う専門家として示されているのは、中小企業診断士、公認会計士、税理士です。行政書士はこの評価を行う専門家には含まれていません。
そのため、行政書士事務所としては、在留資格の申請だけでなく、必要に応じて税理士などと連携し、事業計画全体を整えていくことが重要になります。
5.営業許可は飲食店営業許可だけではない
飲食店を開業する場合、保健所への営業許可申請に加えて、食品衛生責任者の設置が必要です。
また、店舗の形態によっては消防署への届出や防火管理者の選任、深夜0時以降に酒類を中心に提供する場合には、警察への「深夜酒類提供飲食店営業」の届出などが必要になることがあります。東京都では、深夜酒類提供飲食店営業について営業開始届出書などが定められています。
「飲食店だから保健所だけ」と考えず、営業時間や営業内容に応じて必要な手続きを最初に確認しておくことが大切です。
6.本人が日本にいる場合は「いつから営業できるか」にも注意
「経営・管理」の許可が出るまで、本人が何をしてよいのかも重要なポイントです。
例えば短期滞在で来日している場合、物件の下見や開業準備などはできますが、実際に経営や就労を行うことはできません。
また、現在「技術・人文知識・国際業務」など別の就労資格で日本に滞在している場合も、在留資格変更の許可を受ける前に、飲食店の経営を始めてしまうと、現在の在留資格で認められていない活動となる可能性があります。
「物件を借りたから、今日から店を始められる」というわけではありません。
7.おすすめしたい準備の順番
外国人が飲食店を開業する場合、基本的には、
①事業計画を作る
②「経営・管理」の要件を確認する
③物件候補を探し、契約前に保健所へ相談する
④資金・会社設立・従業員などを準備する
⑤内装工事を行う
⑥営業許可など必要な手続きを進める
⑦「経営・管理」の申請を行う
⑧許可取得後、適法な状態で営業を開始する
というように、全体を一つのスケジュールとして考えることが大切です。
ただし、現在の在留資格や、海外から新たに呼び寄せるのか、法人・個人のどちらで開業するのかによって、実際の進め方は変わります。
おわりに
外国人の飲食店開業では、「ビザ」「会社」「物件」「営業許可」を別々の問題として考えないことが何より重要です。
特に2025年10月以降、「経営・管理」の基準は大きく変わっています。昔の「資本金500万円があれば大丈夫」という情報だけを頼りに準備すると、現在の基準に合わない可能性があります。
物件を契約する前に、在留資格と営業許可の両方から計画を確認しておけば、後からのやり直しを減らすことができます。
「この物件で大丈夫なのか」「3,000万円の要件をどう準備すればよいのか」「今の在留資格のまま、どこまで開業準備をしてよいのか」など、開業前の段階からお気軽にご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
