現場でトラブルを防ぐための実践的な契約条項と管理のポイントを解説します。
1.在留資格と雇用契約はセットで考える
「技術・人文知識・国際業務」などで外国人を採用する場合、単に契約書へ「営業職」「総合職」と記載するだけでは不十分な場合があります。実際に担当する日常業務が、入管法上で許可された活動範囲に収まっていることが大前提だからです。
また、在留資格には必ず期限があります。入社後も定期的な更新手続きが発生しますし、部署異動などで担当業務が大きく変わる場合には、在留資格の変更手続き(入管法第20条)が必要になることもあります。
後々のトラブルを防ぐためには、雇用契約書の中で「在留資格手続きへの対応や協力義務」を明確にしておくことが大切です。
2.入れておきたい基本的な在留資格条項
雇用契約書には、まず次のような基本条項を盛り込んでおくことが考えられます。
- 就労資格の保持を前提とする旨の規定
「本契約に基づく就業は、従業員が日本国において適法に就労できる在留資格を取得・保持していることを前提とする。従業員は、在留資格や在留期間等について会社から求められた場合、速やかに必要な情報・書類を提供し、適切な手続きを行うものとする。」
- 手続きへの協力義務
「従業員は、在留資格の更新および変更等の手続きについて、会社から求められた場合には会社と協力して必要な手続きを行うものとする。」
このように定めておくことで、適法な在留資格の保持が雇用の重要な前提であることを本人と共通認識にできます。
なお、入管の審査結果は行政の判断によるため、会社側が「必ず更新させる」「資格取得を保証する」といった表現を入れることは避けてください。
3.更新が不許可になった場合の対応と規定の考え方
万が一、在留期間の更新が不許可になってしまった場合の規定については、特に慎重な配慮が必要です。
契約書に「不許可となった場合は当然に自動解雇(または契約終了)する」と記載するケースが見られますが、これには注意が必要です。外国人であっても日本の労働法(労働契約法第16条など)の保護を受けるため、更新不許可の事情や再申請の可能性を考慮せず即時に解雇と扱うことは、法的な有効性を問われるリスクがあります。
実務上は、以下のような段階的な対応を定めておくことが現実的です。
- 協議および就労見合わせに関する規定(例)
「在留資格の更新または変更が不許可となり適法に就労継続できなくなった場合、会社および従業員は今後の対応(再申請や資格変更の可能性など)について速やかに協議するものとする。なお、適法に就労できない期間中、会社は労務の受領を行わないものとする。」
不許可確定後に適法な就労資格がない状態で働かせ続けると、企業側も不法就労助長罪(入管法第73条の2/3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)に問われるおそれがあります。過失による確認漏れであっても処罰の対象となり得るため、まずは就労を見合わせた上で、雇用継続の可能性を協議する仕組みにしておくことが安全です。
※なお、更新不許可時の当然終了条項や解雇の有効性については労働法上の個別判断が深く関わるため、具体的な規定作成にあたっては労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士などの専門家へ相談されることを推奨します。
4.配置転換や業務変更に備える(就労資格証明書の活用)
入社後に社内の事情で担当業務を変更(配置転換)する際も注意が必要です。
例えば、ITエンジニアとして採用した外国人を、現場の都合で長期間にわたり工場での単純作業や接客業務へ異動させるようなケースです。会社としては単なる社内の配置転換のつもりでも、入管法上は認められた活動範囲を超え、不法就労とみなされる危険性があります。
そのため、契約書には次のような規定を置いておくことが有効です。
- 業務変更時の適合性確認規定(例)
「会社は、従業員の在留資格により認められた活動範囲を考慮して業務内容を決定・変更するものとする。業務内容の変更に伴い手続きが必要となる場合は、事前に会社および従業員で必要な対応を協議する。」
【異動後の業務範囲が不安な場合】
新しい業務内容が現在の在留資格の範囲内にあるか公的に確認したい場合は、入管法第19条の2に基づく「就労資格証明書」の交付申請手続きを活用する選択肢があります。あらかじめ入管から証明を得ておくことで、次回の更新時の不許可リスクを軽減し、企業としても安心して配置転換を行うことができます。
5.在留カードで確認すべきポイント
外国人社員を管理する際、「在留カードの表面の期限だけを見ている」という状態は非常に危険です。
雇用にあたっては、以下の項目を多角的に確認する必要があります。
- 在留資格の種類(就労不可の資格ではないか)
- 許可されている活動内容
- 在留期間および満了日
- 資格外活動許可の有無(アルバイトや副業等の場合)
- 特定活動・特定技能等の場合、指定書や対象分野の確認
なお、外国人労働者を雇用・離職した際は、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が義務付けられており、その際にも在留カードの記載事項を正確に把握することが求められます。
6.現場で機能する「社内管理体制」の作り方
雇用契約書を整えることと並行して、社内での運用ルールを明確にしておくことがトラブル防止の鍵となります。
- 更新申請の時期(満了の3か月前から可能)
在留期間が6か月以上ある方の場合、更新申請は在留期間が満了する3か月前から可能です。直前になって慌てないよう、満了日の3か月前には本人へ準備を促す体制を整えましょう。
- 「特例期間」の確認方法
満了日までに更新申請を完了すると、審査結果が出るか、または満了日から2か月が経過する日のいずれか早い時まで、従前の在留資格のまま適法に就労を継続できる「特例期間」(入管法第20条第6項、第21条第4項準用)に入ります。
申請が完了したことは、原則として在留カード裏面の「在留期間更新許可申請中」のスタンプやオンライン申請の受付通知等で確認できますので、会社として必ずコピーを控えましょう。
- 許可後の新しいカード確認
新しい在留カードが交付されたら、速やかに現物を提示させ、記載内容と期限を確認・保管します。
まとめ
外国人社員の雇用管理は、採用時の一度きりで終わるものではありません。
「契約書の整備」→「正確な在留資格・期限の把握」→「更新時期および特例期間の管理」→「業務変更時の適法性チェック」という一連のプロセスを社内で標準化しておくことが、企業のコンプライアンスを守り、外国人社員が安心して働ける環境づくりにつながります。
当事務所では、外国人雇用のための雇用契約書チェックや在留資格手続き、社内管理体制の構築に関するご相談を承っております。外国人雇用や入管手続きにご不安や疑問をお持ちの企業様は、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
