はじめに
「優秀な外国人エンジニアを採りたいが、大卒ではない」「文系出身でIT専攻ではない」――そんな理由でビザの取得をあきらめていませんか?
実は、IT分野の採用においては、指定の試験合格や資格保有によって通常の学歴・実務経験要件が免除される強力な特例が存在します。
今回は、実務で知っておくべき「IT告示特例」の仕組みと、申請時にハマりがちな注意点を分かりやすく解説します。
1.ITエンジニアには「学歴・実務経験」の特例がある
「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の在留資格を取得する場合、通常は実務に関連する大学等の卒業、または10年以上の実務経験などが求められます。
しかし、情報処理の技術・知識を要する業務に従事する場合、法務大臣が定める告示(平成25年法務省告示第437号/いわゆる「IT告示」)に該当する試験に合格していれば、学歴や実務経験の要件を満たしたものとして扱われる特例が認められています。
つまり、最終学歴が高卒であっても、実務経験が短くても、対象の試験・資格をクリアしていれば「技人国」ビザの申請土台に立つことができるのです。
ただし、すべてのIT資格が対象になるわけではありません。 どの試験が認められているかを正確に把握しておくことが重要です。
2.どのような試験・資格が対象になるのか?
対象となる試験・資格は、法務省告示によって具体的に定められています。
- 日本国内の国家試験(例)
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- 情報セキュリティマネジメント試験
- ITストラテジスト試験
- システムアーキテクト試験
- プロジェクトマネージャ試験
- ネットワークスペシャリスト試験
- データベーススペシャリスト試験
- 情報処理安全確保支援士試験 など
※なお、エントリー向けの「ITパスポート試験」は告示の対象外ですのでご注意ください。
海外の試験・資格
アジア諸国等との相互認証に基づき、中国、韓国、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、台湾など、告示に列挙された各国の指定試験・資格を保有している場合も特例の対象となります。
ただし、母国の一般的な民間資格や指定外の検定は認められません。また、対象試験は告示の改正により変更される場合があるため、申請時点での最新告示を確認することが不可欠です。
3.試験に合格していれば必ずビザは取れる?
ここで企業様が最も注意すべきなのは、「試験合格=ビザ発給確定」ではないという点です。
この特例で免除されるのは、あくまで「学歴・実務経験」の要件だけです。ビザの審査では、以下のような基本要件が当然にチェックされます。
- 業務の専門性: 実際に担当する業務が、高度なIT知識を必要とする内容か(単なるデータ入力や単純な機器設置作業などは不可)。
- 報酬の同等性: 同等の業務を行う日本人社員と同等額以上の報酬が支払われているか。
- 企業の安定性: 採用企業の経営状況や受け入れ体制に問題がないか。
どれだけ難関の資格を持っていても、実務内容が単純作業とみなされれば不許可になります。内定を出す際は、資格の有無だけでなく「任せる仕事内容」と「雇用・報酬条件」をセットで審査基準に適合させておく必要があります。
4.採用企業が事前に確認すべきチェックリスト
トラブルを未然に防ぐため、選考段階で次の3点を確認しておきましょう。
1.資格・合格証が最新の告示対象に含まれているか
候補者の保有資格が、法務省告示に明記された対象試験と完全に一致するか確認します。
2.任せる業務内容が「技人国」の専門性に合致しているか
開発・設計・インフラ構築など、専門的なIT業務に従事させる計画を文章化できる状態にしておきます。
3.申請の立証資料を漏れなく揃えられるか
雇用契約書、職務内容説明書、企業の決算書、合格証明書など、特例適用の根拠を客観的に示す資料を用意します。
まとめ
学歴や長期の実務経験がない外国人人材であっても、対象となる情報処理技術者試験に合格していれば、「技人国」ビザを取得してITエンジニアとして活躍してもらうことが可能です。
しかし、告示対象の正確な判定や、職務内容・報酬額のバランスなど、実務審査で問われるポイントは多岐にわたります。
当事務所では、外国人の採用計画段階における在留資格の要件確認から、職務内容の精査、出入国在留管理局への申請手続きまで、実務に即したサポートを行っております。
「この資格でビザが出るか確認したい」「学歴要件に不安がある候補者を採用したい」など、外国人IT人材の採用に関するお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
