1. はじめに
「海外の弁護士を日本の法律事務所で採用したい」「外国人公認会計士を日本の会計事務所で雇用したい」。このような場合に検討される代表的な在留資格の一つが、「法律・会計業務」です。
「法律・会計業務」は、弁護士や公認会計士など、日本の法律上認められた法的資格を有する者が行う法律・会計に関する専門業務を対象とする在留資格です。外国法事務弁護士や外国公認会計士もこの対象に含まれます。
一方で、法律事務所や会計事務所で働く外国人が、必ずこの「法律・会計業務」になるわけではありません。「勤務先」ではなく、「本人が保有する資格」と「実際に従事する業務内容」の組み合わせで判断される点が、実務上の最重要ポイントです。
2. 「法律・会計業務」は資格に基づく業務が前提
出入国在留管理庁の運用において、「法律・会計業務」の対象となるのは、日本の法律に基づき以下の資格を有する者(または法律で認められた外国資格者)が行う業務に限られています。
- 弁護士、外国法事務弁護士
- 公認会計士、外国公認会計士
- 税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士
したがって、単に「法律事務所に勤務する」「会計事務所で働く」という理由だけでこの在留資格が許可されるわけではありません。
たとえば、弁護士資格を持たない外国人が法律事務所でリサーチや翻訳を行う「パラリーガル」として勤務する場合や、無資格でコンサルティングを行う場合は、「法律・会計業務」ではなく「技術・人文知識・国際業務」などの別の在留資格を申請することになります。
3. 外国法事務弁護士(外弁)の職務範囲と注意点
外国人の弁護士を採用する際は、その取り扱い業務の範囲に細心の注意が必要です。
外国法事務弁護士(外弁)は、原資格国(資格を取得した国)の法律や、法務大臣から指定を受けた「指定外国法」に関する法律事務を取り扱うための制度です。
日本法に関する法律事務については、たとえ日本の弁護士と共同事業を行ったり雇用関係にあったりする場合であっても、外国法事務弁護士の資格で取り扱うことは法律上禁止されています。
したがって、採用時には「外国の弁護士資格を有しているか」だけでなく、法務大臣の承認・日本弁護士連合会(日弁連)への登録手続きが済んでいるか、そして実際に日本で担当させる業務が「外国法に関する法律事務」の範囲に収まっているかを厳格に確認する必要があります。
4. 外資系会計事務所における資格と業務内容の確認
会計分野においても同様の注意が必要です。
海外で会計士資格を持つ外国人であっても、日本の公認会計士法に基づく「外国公認会計士」として内閣総理大臣の承認および日本公認会計士協会への登録を受けていない限り、日本国内で「法律・会計業務」の資格のもと公認会計士業務を行うことはできません。
外資系会計事務所やコンサルティングファームで、外国人スタッフが経理・財務分析・経営コンサルティング・税務の補助業務などを行う場合は、資格の有無や登録状況に応じ、「技術・人文知識・国際業務」など適切な在留資格を選択する必要があります。
5. 採用時に確認すべき3つの実務ポイント
法律事務所や会計事務所が外国人を採用する際は、以下の3点を事前にチェックすることが不可欠です。
- 本人が保有する「公的資格」と「日本での登録状況」
外国法事務弁護士としての登録や、外国公認会計士としての承認など、「法律・会計業務」の前提となる法的要件を満たしているか確認します。
- 実際の「従事業務」の範囲
雇用契約書や職務記述書(ジョブディスクリプション)に記載された業務が、資格の許容範囲(例:外国法事務に限られているか等)と合致しているかを確認します。
- 現在の在留資格と必要な申請・届出
すでに日本に在留している外国人を採用する場合、現在の在留資格から変更が必要かを確認します(例:「技術・人文知識・国際業務」から「法律・会計業務」への変更手続きなど)。
なお、「法律・会計業務」の在留資格で働く外国人が転職や離職をした場合、入管法第19条の16に基づき、変更が生じた日から14日以内に出入国在留管理庁長官への届出(所属機関に関する届出)を行わなければなりません。この届出を怠ると、入管法上の罰則の対象となる可能性があるほか、将来の在留期間更新や永住申請などの審査において不利益に扱われるリスクがあるため注意が必要です。
6. おわりに(当事務所へのご相談)
在留資格「法律・会計業務」は、高度な専門資格を有するプロフェッショナルのための特別な在留資格です。
- 「勤務先」ではなく「資格」と「実際の担当業務」で判断する
- 外国法事務弁護士は日本法に関する法律事務を扱えない
- 資格や登録のない業務を担当させる場合は「技術・人文知識・国際業務」等を検討する
外国人弁護士や会計士の採用・受入れにあたっては、弁護士法や公認会計士法などの業法チェックと、入管法上の在留資格の整合性を同時に確認しながら、適切かつ確実な手続きを進めることが求められます。
当事務所では、高度専門職や就労ビザをはじめとする外国人採用・在留資格手続きについて、個別のケースに応じた正確なリーガルチェックと手厚い申請サポートを提供しております。外国人の雇用計画や在留手続きに不安がある企業の皆様・士業事務所様は、ぜひお気軽にご相談・お問い合わせください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
