■ はじめに
「海外の取引先の社長を日本に招いて会議をしたい」
「外国人の専門家に日本で講演してもらいたいが、謝礼を払っても大丈夫?」
「海外メディアの記者が日本で取材する場合、短期滞在で問題ない?」
海外から外国人を短期間日本に招く企業の方から、このような「短期滞在ビザでどこまで仕事に関わる活動ができるのか」というご相談をよくいただきます。
短期滞在は、原則として就労(日本で働いて報酬を得ること)を目的とした在留資格ではありません。
一方で、「仕事に関係することを一切してはいけない」という意味でもありません。入管法上、短期滞在には会合への参加や業務連絡など、一定の「商用活動」が含まれています。
今回は、会議、商談、講演、取材などを例に、短期滞在で認められる活動と注意が必要な活動の境界について解説します。
■ 「短期滞在」は何ができる在留資格?
出入国在留管理庁の定義によると、「短期滞在」は、日本に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族訪問、見学、講習、会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動を対象としています。
具体的には以下のような活動が代表例です。
・日本企業との商談や契約締結
・取引先との打合せや会議への出席
・日本の工場や店舗の視察・見学
・市場調査や業務上の連絡
・社内講習への参加
つまり、「仕事に関係する活動=すべて違法な就労」というわけではありません。日本で直接的な労働対価(報酬)を得ない範囲のビジネスコミュニケーションは、短期滞在(短期商用)の範囲として認められています。
■ 会議・商談・視察は問題ない?
例えば、海外企業の役員が日本の取引先との会議に出席するため5日間来日し、契約の話し合いをするケースです。これは短期滞在として認められる標準的な活動です。
ただし、いくら「会議」や「指導」という名目であっても、日本企業に常駐して実際の業務ラインに入り、実質的な労働を行うような場合は短期滞在の範囲を超えてしまいます。「短期滞在でカバーできる商用活動か」それとも「就労ビザ(技術・人文知識・国際業務や企業内転勤など)が必要な労働か」を活動実態で判断することが重要です。
■ 「講演料」や「謝礼」が出る場合の注意点
企業の招へい担当者が最も悩むのが「海外から専門家や経営者を招いて講演してもらう」ケースです。
短期滞在では、入管法上「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」が禁止されています。ここでいう「報酬」とは、労働やサービス提供の「対価」として支払われる金銭を指します。
そのため、日本国内の企業や団体から「講演料」「講義謝礼」といった名目で対価としての金銭が支払われる場合は、たとえ単発の講演であっても「報酬を受ける活動」とみなされ、短期滞在では認められないリスクが高くなります。
一方、労働の対価ではなく、来日に必要な「航空賃や宿泊費、実費程度の日当(渡航実費・滞在費)」を日本側が負担するだけであれば、法的な「報酬」には該当せず、短期滞在の範囲内として扱われるのが一般的です。
なお、海外の所属元から給料が出ている場合でも注意が必要です。「海外からの支払いであれば常に安全」というわけではなく、あくまで本国の通常の給与が継続している場合であって、来日中の活動そのものに対する臨時の対価が支払われる場合は短期滞在の範囲を超える可能性があります。「謝礼の金額が少ないから大丈夫」ではなく、「それが労務の対価(報酬)なのか実費精算なのか」という性質で判断する必要があります。
■ 取材活動はどう考える?
海外の新聞社やテレビ局の記者が日本で短期取材を行う場合、外国の報道機関から給与を受け取っており、日本国内の機関から報酬を得ないのであれば、原則として短期滞在(短期商用)の範囲内で単発の取材を行うことが可能です。
ただし、日本国内の媒体や企業と直接契約して取材・執筆を行い、日本側から報酬を得るような場合は、在留資格「報道」や就労ビザが必要となります。
■ 「短期間なら働いても大丈夫」という誤解
短期滞在について、非常に多く見られる誤解が「1日だけなら働いてもいい」「1週間程度の短期手伝いならビザは要らない」という考え方です。
これは完全に誤りです。滞在期間が1日であっても90日であっても、日本国内で報酬を受ける労働活動を行うのであれば、短期滞在で行うことはできません。判断の基準は「何日間日本にいるか」ではなく、「日本で何をするのか」「報酬が発生するか」です。
■ 招へい前にチェックすべきポイント
企業が外国人を日本に招く際は、航空券を手配する前に以下の点を確認することをおすすめします。
日本で行う具体的な活動内容(単なる会議・視察か、労働や技術指導か)
金銭の支払い有無とその名目(労務の対価か、渡航実費・宿泊費の負担か)
支払う主体は誰か(海外の所属元か、日本の受入企業か)
■ まとめと当事務所へのご相談
短期滞在は「日本で働くためのビザ」ではありませんが、商談や会議、視察などの商用活動まで禁止されているわけではありません。
ポイントは、「活動の内容」と「日本側からの報酬(対価)が発生するかどうか」です。
「海外の取引先や専門家を呼びたいが、この活動内容で短期滞在で問題ないか不安」「適切な招へい手続きやビザの選択について確認したい」という企業様は、来日スケジュールが決まる前の早期の段階で、ぜひ当事務所にご相談ください。個別の活動計画に合わせた法令遵守の招聘・ビザ戦略をサポートいたします。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
