■はじめに
「日本でマンションを買えば、永住ビザが取りやすくなる?」
「1億円の不動産を購入すれば、経営・管理ビザを取得できる?」
外国人の方から、このような質問を受けることがあります。
日本では外国人による不動産の購入自体は可能ですが、不動産を購入したことだけを理由に、在留資格が取得できたり、永住許可が受けやすくなったりする制度はありません。
一方で、不動産を所有していることが、状況によっては審査の中で一定の意味を持つ場合もあります。
今回は、「不動産を買えばビザに有利」というよくある誤解について、永住と「経営・管理」の在留資格を中心に解説します。
■ 日本の不動産を買っても「不動産投資ビザ」にはならない
まず押さえておきたいのが、日本には「不動産を購入すれば取得できるビザ」という在留資格はないということです。
例えば、外国人が日本でマンションや一戸建てを購入したとしても、それだけで「永住者」になったり、「経営・管理」の在留資格が取得できたりするわけではありません。
在留資格は、日本でどのような活動を行うのか、あるいはどのような身分・地位に基づいて日本に滞在するのかによって判断されます。
そのため、「日本に1億円のマンションを持っているからビザが取れる」という考え方は基本的に正しくありません。
■ 不動産を所有していると永住に有利になる?
では、永住許可の場合はどうでしょうか。
永住許可の審査では、原則として、
・素行が善良であること(素行善良要件)
・独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること(独立生計要件)
・その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)
などが審査されます。
ここで「資産」という言葉が出てくるため、「日本に不動産を持っていれば永住に有利なのでは?」と考える方がいます。
しかし、日本の不動産を所有していること自体が永住許可の直接の要件になっているわけではありません。
例えば、十分な安定収入があり、継続して生活できる経済的基盤がある人であれば、賃貸住宅(持ち家なし)であっても永住許可を受けることは十分に可能です。
反対に、高額な不動産を所有していても、税金や社会保険料などの公的義務の履行状況、在留状況、収入の安定性などに問題があれば、不動産を所有していることだけで永住許可が認められるわけではありません。
なお、実務上、マイホームなどの不動産所有や住宅ローンの返済状況は「日本への定住意思」や「経済的安定性」を補強する要素として評価されることがあります。ただし、住宅ローンがある場合は「収入に対してローンの返済負担が過大でないか」「滞納なく確実に返済できているか」といったバランスも厳しく確認されます。
つまり、永住審査では単に「家を持っているか」だけを見るのではなく、日本で安定して生活し、適正に社会生活を送っているかを総合的に判断することが重要です。
■ 「不動産を買えば経営・管理ビザが取れる」はさらに注意
もう一つ、よくある誤解が「日本の不動産を購入すれば経営・管理ビザが取れる」というものです。
「日本のマンションを買って、それを外国人向けに貸し出せば、経営・管理ビザを取得できるのでは?」と考える方もいます。
しかし、単に自己の資産として不動産を所有・保持しているだけでは、「経営・管理」の在留資格には該当しません。
「経営・管理」は、日本において事業の経営を行い、またはその事業の管理に従事する活動を対象とする在留資格です。
つまり重要なのは、不動産を持っているかではなく、日本で実際にどのような事業を行い、その事業を自ら経営・管理しているのかという点です。
例えば、単に自分が住むためのマンションを購入しただけでは、当然「経営・管理」の活動にはなりません。
■ では、不動産賃貸業ならどうなの?
では、複数の不動産を購入して賃貸事業を行う場合はどうでしょうか。
この場合は、不動産そのものではなく、実際に事業(事業性・継続性・実体)として賃貸経営を行っているかという観点から検討する必要があります。
ただし、不動産を1〜2室購入して賃貸している程度では、管理業務の量も乏しいため、直ちに「経営・管理」の在留資格が認められるものではありません。
「経営・管理」では、独立した事業所の確保や事業規模など、法令上の基準を満たすことが不可欠です。
さらに、2025年10月16日の改正基準省令の施行により、「経営・管理」の許可基準は大きく厳格化されました。
現在は、事業所の確保に加え、「事業の用に供される財産の総額(または資本金等)3,000万円以上」かつ「常勤職員1名以上の雇用」の両方を満たすことが必須となっています。さらに、日本語能力や経営・管理に関する学位・実務経験など、従来よりも具体的かつハードルの高い要件が課されています。
したがって、現在「不動産投資を利用して経営・管理の在留資格を取得したい」と考える場合には、単に不動産を購入することだけでなく、事業としての実態や規模、事業所、資金、人員構成などを総合的かつ緻密に計画する必要があります。
■ 不動産購入が「まったく意味がない」というわけではない
ここまで読むと、「では不動産を買ってもビザとは何の関係もないの?」と思われるかもしれません。
そうとも限りません。
例えば永住許可を申請する際に、自己所有の不動産があることは、日本での定住性や経済的安定性を立証するうえでポジティブな一要因となり得ます。
また、日本で事業を行う場合に、その事業に不可欠な事務所や店舗、事業用物件を自社で所有していることが、事業基盤の確実性を示すケースもあります。
ただし、ここで重要なのは、
「不動産を所有しているから許可される(直接の要件)」のではなく、
「在留資格の要件を満たしているかを判断する際の一事情になり得る(立証資料・補足要素)」
ということです。
この違いを正しく理解しておくことが大切です。
■ 「ビザ目的」で先に不動産を買うのは要注意
外国人投資家の方から、
「ビザを取りたいので、とりあえず日本の不動産を買おうと思っています」
という相談を受けた場合、まず確認すべきは不動産の選定ではありません。
その方が日本で何を実現したいのか、どのようなビジネスや活動を行うのか、どの程度の収入・資産があるのか、ご家族の生活設計はどうするのか。
これらを整理したうえで、最適な在留資格(ビザ)の選択肢を検討する必要があります。
例えば、会社を自ら経営するのであれば「経営・管理」、企業等で専門職として働くのであれば「技術・人文知識・国際業務」、高い能力や高度な実績がある場合は「高度専門職」、日本人との婚姻関係がある場合には「日本人の配偶者等」など、状況に応じてアプローチは大きく変わります。
「不動産を先に買う」のではなく、「自分の日本での活動に合った在留資格を確認する」ことが最優先です。
■ まとめと当事務所へのご相談
日本で不動産を購入することは、外国人の方にとって資産形成や生活基盤づくりの有効な手段の一つです。
しかし、不動産を購入したこと自体によって、自動的に永住許可や「経営・管理」の在留資格が得られるわけではありません。
永住においては、資産状況だけでなく、素行、継続的な収入・生活基盤、税金・社会保険料等の履行状況などが総合評価されます。
また、「経営・管理」においても、不動産の所有ではなく、日本で展開する事業の実態や規模、事業所、経営者としての関与度合い・適性が厳しく審査されます。
「日本の不動産を購入し、将来的には日本に定住・事業展開したい」
「自分の現在の状況で経営・管理ビザや永住申請の条件を満たせるか知りたい」
とお考えの方は、不動産を購入してしまう前に、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
当事務所では、お客様の将来の生活設計や事業計画全体を伺ったうえで、最適な在留資格の選択から申請手続きまでトータルでサポートいたします。個別の状況に応じた最適なプランをご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
