はじめに
「高度専門職」という在留資格には、実は2つの認定ルートがあります。
一つは、学歴や職歴、年収、日本語能力などを点数化し、合計70点以上を目指す「高度人材ポイント制」です。もう一つが、2023年4月にスタートした「特別高度人材制度(J-Skip)」です。
J-Skipの大きな特徴は、ポイントを一つひとつ計算しなくても、一定以上の学歴または職歴と高い年収があれば「高度専門職」として認定される点にあります。
今回は、通常のポイント制との違いや、J-Skipならではの優遇措置について分かりやすく解説します。
J-Skipは「ポイント計算をしない」高度専門職の制度
通常の高度人材ポイント制では、「高度学術研究活動(1号イ)」「高度専門・技術活動(1号ロ)」「高度経営・管理活動(1号ハ)」の3つの活動類型について、学歴、職歴、年収などをポイント化し、原則70点以上であることが求められます。
これに対してJ-Skipでは、ポイントの合計点ではなく、「学歴または職歴」と「年収」という明確な基準によって特別高度人材に該当するかを判断します。
ただし、「ポイント制を使わない=審査がない」という意味ではありません。実際には、予定している活動が高度専門職に該当することに加え、基準を満たす学歴・職歴や年収(見込み額)を証明する資料を提出・審査する必要があります。
J-Skipの対象になるのはどんな人?
活動内容(カテゴリー)によって要件が異なります。
「高度学術研究活動(1号イ)」または「高度専門・技術活動(1号ロ)」の場合
次のいずれかを満たす必要があります。
- 修士号以上を取得し、かつ年収2,000万円以上
- 従事しようとする業務に関する実務経験10年以上で、かつ年収2,000万円以上
「高度経営・管理活動(1号ハ)」の場合
- 事業の経営または管理に関する実務経験5年以上、かつ年収4,000万円以上
たとえば、「年収2,500万円で日本企業の研究開発部門に勤務する修士号取得者」や、「年収4,500万円で日本法人の経営に携わる経験豊富な経営幹部」などは、J-Skipの検討対象となります。
※注意したい「年収」の捉え方
ここで求められる年収は、過去の実績ではなく「今後日本で受ける予定の契約上の年間報酬額(見込み)」を指します。また、残業手当や通勤手当などの実費補填的な手当は年収に含まれない場合があるため、雇用契約書や年収証明書の記載内容には注意が必要です。
J-Skipにはどんなメリット(優遇措置)がある?
J-Skipに認定されると、通常の高度専門職の優遇措置に加え、さらに拡充された特別高度人材ならではのメリットを受けることができます。
1.「永住許可」の在留期間要件が1年に短縮
通常は原則10年(通常の高度専門職でも1年〜3年)必要な在留実績ですが、J-Skipの対象者はわずか1年の在留実績で永住許可申請が可能になります。
2.配偶者の就労要件の緩和(対象分野の拡大)
通常の高度専門職の配偶者は4分野に制限されていますが、J-Skipの配偶者は告示で定める9分野(教授・研究・教育・技術/人文知識/国際業務・芸術・宗教・報道・技能・興行以外の芸能活動)にまで就労可能な職種が広げられます。学歴や職歴等の要件を満たしていなくても、フルタイム(週28時間超)での就労が認められます。
3.家事使用人の雇用条件緩和
通常の高度専門職では原則1名までに制限されていますが、J-Skipでは世帯年収等の条件(世帯年収3,000万円以上など)を満たすことで、最大2名まで家事使用人を帯同・雇用することが可能です。
4.プライオリティーレーンの利用
主要な国際空港等に設置されたプライオリティーレーン(優先導線)を利用でき、出入国手続きがスムーズに行えます。
5.入国・在留手続の優先処理
在留資格申請などの審査が優先的に行われます。
申請前に確認したいポイント
J-Skipは、年収が高ければ自動的に認められる制度ではありません。
まず、ご自身が日本で行う予定の活動が「高度専門職1号(イ・ロ・ハ)」のどの類型に該当するのかを確定させ、そのうえで要件を満たす公的証明書類を用意する必要があります。
また、手続きにあたっては、特別高度人材に該当する旨を申し出る申明書や学歴・職歴・年収を証明する各種資料を提出します。なお、在留申請オンラインシステムの仕様上、入力画面等で「高度専門職ポイント計算表」の項目が表示・入力要求される場合がありますが、審査自体はJ-Skipの要件に基づいて行われますのでご安心ください。
まとめ
J-Skipは、「ポイントをコツコツ積み上げる」のではなく、「一定以上の学歴・職歴 + 高い年収」という明確な基準で高度専門職を目指せる魅力的な制度です。
しかし、「通常のポイント制とJ-Skipのどちらで申請すべきか」「契約年収の立証資料として何を用意すべきか」「家族や家事使用人の帯同手続きをどう進めるか」など、実務においては個別具体的な状況に応じた的確な判断と立証資料の準備が不可欠です。
当事務所では、高度専門職ビザやJ-Skipの申請手続き、配偶者の就労手続き、永住許可申請まで幅広くサポートしております。「自分や自社の社員がJ-Skipの対象になるか知りたい」「スムーズに申請を進めたい」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
