はじめに
外国人の方から、「一時的に母国へ帰りたいのですが、再入国許可は必要ですか?」という相談を受けることがあります。
日本で在留資格を持って生活している外国人が、短期間だけ海外へ帰省したり、旅行したりする場合には、原則として事前に「再入国許可」を取得する必要はありません。
その理由が「みなし再入国許可」という制度です。
ただし、「1年以内なら何をしても大丈夫」という制度ではありません。在留期限との関係や、出国時の手続きなど、いくつか注意点があります。
今回は、外国人の方が海外へ一時的に出国する際に知っておきたい「みなし再入国許可」について、基本から分かりやすく解説します。
1.みなし再入国許可とは?
みなし再入国許可とは、日本に在留する外国人が一時的に海外へ出国し、出国の日から1年以内に日本へ戻る場合、原則として通常の再入国許可を取得せずに再入国できる制度です。
たとえば、「家族滞在」の在留資格で日本に住んでいる外国人が、夏休みに母国へ3週間帰国するケースを考えてみましょう。
有効なパスポートと在留カードを持っていて、1年以内に日本へ戻るのであれば、原則として出国前に再入国許可を申請する必要はありません。
出入国在留管理庁も、出国の日から1年以内に再入国する場合には、一定の要件を満たせば「みなし再入国許可」により出入国でき、特に事前の手続きは不要と案内しています。
※特別永住者の方へ
特別永住者の方の場合、みなし再入国許可の有効期間は「出国の日から2年間」となります。
2.出国するときに「意思表示」が必要です
「事前の申請が不要」とはいっても、空港で何もしなくてよいわけではありません。
みなし再入国許可を利用して出国する場合は、出国時に再入国する意思を示す必要があります。
具体的には、空港の入国審査場で提出する再入国出国記録(再入国EDカード)にある「一時的な出国であり、再入国する予定である」旨のチェック欄にチェックを入れ、入国審査官に提示します。
つまり、
「事前申請が不要」=「出国時の手続きも不要」
ではありません。
この点は、初めて海外へ出国する外国人の方には特に説明しておきたいポイントです。
3.「1年以内」だけでなく「在留期限」も確認
もう一つ重要なのが、在留期限との関係です。
みなし再入国許可の有効期間は、原則として出国の日から1年間です。
ただし、出国の日から1年が経過する前に現在の在留期限が到来する場合には、みなし再入国許可の有効期間もその在留期限までとなります。
たとえば、
- 在留期限:2027年3月31日
- 出国日:2026年10月1日
という場合、出国から1年後は2027年10月1日ですが、在留期限はそれより前に到来します。この場合、みなし再入国許可の有効期限も「2027年3月31日」までとなります。
そのため、単純に「1年間海外に滞在できる」と考えることはできません。海外へ出発する前には、在留カードに記載された在留期限を必ず確認することが大切です。
4.海外で「もう少し滞在したい」は原則NG(期限切れで資格失効)
みなし再入国許可を利用する場合に、特に注意したいのがこの点です。
たとえば、当初は半年程度で日本へ戻る予定だったものの、海外で仕事や家庭の事情が生じ、「もう少し滞在したい」となった場合です。
みなし再入国許可の有効期間は、海外滞在中に延長することが一切できません。
万が一、有効期間(または在留期限)を1日でも過ぎてしまうと、現在の在留資格は自動的に消滅(失効)してしまいます。その場合、お持ちの在留カードも効力を失い、日本へ再入国できなくなるため、改めて査証(ビザ)の取得手続きからやり直さなければなりません。
「期限が近づいたら海外から延長申請をすればいい」と考えるのは非常に危険です。出国前に、いつ日本へ戻るのかを確実に見通したうえで利用する必要があります。
5.すべての外国人が対象になるわけではありません
みなし再入国許可には対象外となるケースがあります。
例えば、
- 在留資格取消手続中の方
- 出国確認の留保対象者
- 収容令書の発付を受けている方
- 難民認定申請中の「特定活動」の在留資格を持つ方
- その他、出入国の公正な管理のため再入国許可を必要とすると認められる方
などです。
また、「短期滞在」の在留資格で日本に滞在している外国人は、みなし再入国許可の対象ではありません。短期滞在で一度出国した場合、再び日本へ入国する際には、原則として新たな入国手続きが必要になります。
6.1年以上の海外滞在を予定している場合は?
海外赴任や長期の帰国などで、1年以上日本を離れる予定がある場合には、みなし再入国許可では対応できません。
この場合は、原則として出国前に通常の「再入国許可」を取得する必要があります。
通常の再入国許可には、1回限り有効なものと、許可期間内であれば何度でも出入国できる「数次再入国許可」があります。
通常の再入国許可なら海外での延長申請が可能
事前に通常の再入国許可を取得して出国した場合、海外滞在中に病気などやむを得ない事情が生じた際には、現地の日本大使館や領事館にて許可期間の延長申請が可能です(※当初の再入国許可を受けた日から通算して6年以内、特別永住者は7年以内に限ります)。
そのため、長期間海外に滞在する可能性がある場合や、スケジュールが不確定な場合には、出国前にどちらの制度を利用するべきか検討しておくことが重要です。
おわりに
みなし再入国許可は、日本で生活する外国人にとって非常に便利な制度です。
「ちょっと母国に帰る」「海外旅行に行く」といった一時的な出国であれば、原則として事前に再入国許可を取得する必要はありません。
一方で、
- 有効なパスポートを持っているか
- 中長期在留者は在留カードを持っているか
- 出国時に再入国の意思表示をしたか(EDカードのチェック)
- 1年以内(特別永住者は2年以内)に戻れるか
- 在留期限が先に到来しないか
- そもそもみなし再入国許可の対象者か
という点は、出国前に必ず確認しておきたいところです。
特に「1年以内」という期間だけに目を向けてしまうと、在留期限との関係や海外での延長不可リスクを見落とすことがあります。
海外への出国予定があり、「みなし再入国許可で問題ないか不安」という方は、ぜひ出入国在留手続きの専門家である当事務所までご相談ください。外国人材の雇用企業様からのご相談や、個別の在留資格・手続に関するご質問も随時承っております。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
