はじめに
特定技能外国人を受け入れている企業にとって、出入国在留管理庁(入管)への「届出」は避けて通れない重要な手続きです。
以前は四半期ごと(年4回)に必要だった定期届出ですが、制度改正によって年1回に簡素化されました。手続きの負担が大幅に軽くなった一方で、「年1回になったから、何かあっても次の定期届出でまとめて報告すればいい」と考えてしまうのは非常に危険です。
特定技能には、定期的に行う届出とは別に、特定の事由が発生した際に速やかに行う「随時届出」があります。今回は、この2つの違いと実務上の注意点を整理します。
1.定期届出は「年1回」に変更されています
特定技能所属機関(受入れ企業)が行う「特定技能外国人の受入れ・活動・支援実施状況に係る定期届出」は、2025年4月1日の制度改正により、提出頻度が四半期ごとから年1回に変更されました。
さらに2026年4月1日からは、以下の新しい運用ルールが適用されています。
- 対象期間:4月1日〜翌年3月31日(1年間)
- 提出時期:翌年4月1日〜5月31日まで
- 変更点:従来別々だった「受入れ・活動状況」と「支援実施状況」の届出が一体化され、「受入れ・活動・支援実施状況に係る届出書」として1つの様式に集約。
(例:2026年4月1日〜2027年3月31日までの実績は、2027年4月1日〜5月31日までに届け出ます。)
2.「年1回になったから安心」は危険!「14日以内」の随時届出とは?
特に注意したいのが、一定の事由が生じた際に「事由が発生した日から14日以内」に提出しなければならない「随時届出」です。定期届出を待たずに、その都度迅速な対応が求められます。
主な随時届出の事由(すべて発生から14日以内に届出が必要):
- 雇用契約に関する事項:特定技能雇用契約の変更・終了・新たな契約締結
- 支援計画に関する事項:1号特定技能外国人支援計画の変更、支援計画の実施困難(※2026年4月新設)
- 委託関係に関する事項:登録支援機関との支援委託契約の締結・変更・解除
- 受入れ体制に関する事項:受入れが困難になった場合、受入れ基準に適合しなくなった場合
整理のポイント
- 定期届出 = 1年間の実績をまとめて報告(毎年4〜5月)
- 随時届出 = 事由が発生したら「14日以内」にその都度報告
3.届出を怠ると罰則や「5年間の受入れ停止」のリスクも
「提出が少し遅れただけ」「うっかり忘れていた」と軽く考えるのは厳禁です。法定の届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合、届出の種類に応じたペナルティが科されます。
- 30万円以下の罰金:特定技能雇用契約の変更・終了・新規締結に関する届出を怠った場合、または虚偽記載をした場合
- 10万円以下の過料:支援計画や委託契約の変更、受入れ困難、基準不適合に関する届出を怠った場合、または虚偽記載をした場合
- 【重要】5年間の受入れ禁止(行政処分):不適正な届出運用や届出義務違反など悪質なケースと判断された場合、「不適正な受入れ機関」として今後5年間にわたり特定技能外国人を受け入れられなくなる欠格事由に該当する可能性があります。
単に金銭的な罰則にとどまらず、自社の事業計画や人手に直結する重大なリスクとなる点に注意が必要です。
4.企業が実務上気をつけたいチェックリスト
社内で以下のような出来事があった場合、「次の定期届出で報告すればいい」と放置せず、14日以内の随時届出対象になっていないかを直ちに確認してください。
- 賃金や労働条件など、雇用契約内容を変更した
- 特定技能外国人が退職・離職した
- 新たに特定技能外国人を入社させた
- 支援計画の内容を変更した
- 委託する登録支援機関を変更・契約解除した
- 経営上の理由等で受入れ継続が困難になった
- 自社支援において、計画通りの支援実施が困難になった
おわりに
定期届出が年1回になったことで企業の事務負担は軽減されましたが、コンプライアンス遵守の重要性が下がったわけではありません。むしろ、「14日以内の随時届出漏れ」を防ぐための社内チェック体制を構築することがこれまで以上に重要となります。
「この変更は14日以内の随時届出が必要なケースだろうか?」と判断に迷った場合は、そのまま放置せず、発生した段階で行政書士などの専門家や管轄の入国管理局へご相談いただくことを強くおすすめします。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
