はじめに
「売上の低迷や資金繰りの悪化で、経営している会社をたたむ(廃業する)ことになった。でも、会社をたたんだら自分の『経営・管理』ビザはどうなってしまうのだろう……」
こうした切実なご相談をいただくことが少なくありません。
経営・管理の在留資格は、日本で事業の経営や管理を行う活動を前提として許可されています。そのため、会社を廃業すると在留資格の前提条件が失われてしまいます。
今回は、会社を廃業した場合の入管への手続き、在留資格取消しのリスク、そして廃業後に取れる現実的な選択肢について、実務の視点から解説します。
1.廃業したら14日以内に「届出」が必要
まず知っておくべきなのは、会社を廃業した際に入管(出入国在留管理庁)へ届出を行う法律上の義務があるという点です。
「経営・管理」の在留資格を持つ方は、主たる活動機関である会社について「名称・所在地の変更」「会社の消滅」「機関からの離脱」などが生じた場合、14日以内に出入国在留管理庁長官へ届け出なければなりません(入管法第19条の16第1号)。
事業を終了して会社を解散・清算(=消滅)させた場合、この届出を怠ると20万円以下の罰金の対象となる可能性があります(入管法第77条の2)。「まずは片付けが終わってから……」と思わずに、廃業が決まったら迅速に届出を行いましょう。
2.「3か月以内なら放置しても大丈夫」という勘違い
「廃業しても、在留期限が残っていれば3か月間は何もしなくて大丈夫」と考えてしまう方がいますが、これは非常に危険な誤解です。
入管法第22条の4第1項第6号では、本来の在留資格に係る活動を正当な理由なく継続して3か月以上行っていない場合、在留資格取消しの対象になると定められています。
ただし、ここで重要なのは「正当な理由」の存在です。
たとえば、会社の清算手続きを具体的かつ着実に進めている期間や、次の事業開設・日本企業への再就職に向けて日常的かつ具体的な活動を行っている期間などは、個別の事情を踏まえて「正当な理由」があると評価され得るケースがあります。
一方、何の活動もせず単に日本に滞在し続けているだけでは「正当な理由がない」とみなされ、在留資格取消しのリスクが高まります。
3.廃業後に考えられる主な選択肢
経営していた会社を廃業した後、日本に引き続き滞在したい場合は、速やかに別の在留資格への移行や手続きを検討する必要があります。
① 新たな会社を設立して再スタートする
事業を立て直し、新しい会社を設立して経営・管理ビザを継続(更新)する方法です。ただし、単に法人登記をするだけでなく、事業計画書、オフィス(事業所)の確保、資金の出所など、改めて厳しい審査基準を満たす必要があります。
② 就労系の在留資格(技人国など)へ変更する
日本企業へ就職することが決まった場合、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへ変更申請を行います。これまでの職歴や大学での専攻内容と、転職先の業務内容に強い関連性があることが求められます。
③ 身分系の在留資格を検討する
日本人や永住者と結婚している場合などは、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」といった身分・地位に基づく在留資格への変更を検討できます。
④ 帰国に向けた準備を行う
日本での活動を終了して帰国する場合、会社の清算手続きや残務処理を進めることになります。なお、自主的な廃業によって当然に「出国準備用のビザ」へ切り替えられる制度が存在するわけではありません。個別の状況に応じて適切な手続きが異なるため、帰国の判断をした段階で早めに専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
外国人経営者にとって、会社の廃業は事業の問題にとどまらず、「自分自身の在留資格(日本での滞在権)をどうするか」という問題と直結しています。
- 廃業したら14日以内に入管へ届出を出す(罰則規定あり)
- 「在留期限が残っているから」と何もせずに放置しない
- 清算手続きや次の活動(転職・再起)の証拠を残しながら早めに動く
廃業を決断する前の「準備段階」からご相談いただくことで、選択肢の幅が広がります。当事務所では、経営・管理ビザからの変更手続きや廃業に伴う在留資格のご相談を随時承っております。お一人で抱え込まず、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
