はじめに
国際結婚をしているご夫婦や海外で暮らす日本人の方から、「海外で子どもが生まれた場合、日本で暮らすためにどんな手続きが必要ですか?」というご相談をよくいただきます。
実はこの場面で多くの方が混乱されるのが、「国内出生」と「海外出生」における法律上のルールの違いです。「出生から30日以内に在留資格の手続きが必要」という知識だけが一人歩きして焦ってしまうケースがありますが、これは原則として日本国内で生まれた外国籍のお子さんに関するルールです。
今回は、海外で生まれたお子さんの戸籍・国籍の手続きと、日本へ入国・滞在する際の手続きについて、実務の視点から分かりやすく整理してお伝えします。
1.海外で生まれた子どもは、日本の在留資格が必要?
海外でお子さんが生まれた場合、まず確認すべきなのは「お子さんが出生時にどの国籍を取得したか」です。
日本の国籍法では、「子の出生の時に父又は母が日本国民であるとき」は、お子さんは出生と同時に当然に(自動的に)日本国籍を取得すると定められています。法務局の手続きによる国籍取得(帰化や届出など)とは異なり、特別な要件を挟むことなく法律上当然に日本国民となります。
ただし、海外で生まれたことで「日本国籍」と「外国籍」の両方を同時に取得した場合(重国籍となる場合)は、非常に重要な注意点があります。
出生の日を含めて3か月以内に、現地の大使館・領事館または日本の本籍地役場へ出生届を提出する際、「日本国籍を留保する」旨の届出をしなければなりません。この国籍留保の手続きを忘れてしまうと、出生の時にさかのぼって日本国籍を失ってしまいますので、絶対に期限を過ぎないよう注意が必要です。
なお、生まれたお子さんが日本国籍を取得している(国籍留保をした)場合は、日本国籍保持者として帰国するため、日本の在留資格(ビザ)は不要です。
2.海外出生の「出生届」と期限
海外で日本人のお子さんが生まれた場合の届出期限は、前述の通り出生の日を含めて3か月以内です。
国際結婚で双方の国の国籍を得るケースはもちろんのこと、出生地の法律(生地主義など)によって自動的に現地の国籍が付与されるケースでも重国籍になります。出産後は体調面や生活環境の変化で慌ただしくなりがちですが、3か月という期限は厳格に運用されていますので、出産前から提出書類の準備を進めておくことを強くおすすめします。
3.「30日以内の在留資格取得」が必要なケースとは?
ではよく耳にする「30日以内の手続き」とは何でしょうか。
出入国在留管理庁の規定によると、日本国内で生まれた外国籍のお子さんが、出生から60日を超えて引き続き日本に滞在しようとする場合、出生の日から30日以内に「在留資格取得許可申請」を行わなければならないとされています。
たとえば、日本に滞在している外国人ご夫婦が日本国内の病院で出産し、お子さんが外国籍のみを持つようなケースです。この場合、日本の市区町村役場へ出生届を出すだけでなく、出入国在留管理局(入管)へ在留資格を取得するための申請が必要となります。
「海外出生」ではなく「日本国内で生まれた外国籍のお子さん」に適用されるルールですので、混同しないように整理しておきましょう。
4.海外で生まれた外国籍の子どもが日本で暮らすには?
一方、海外で生まれたお子さんが「外国籍のみ」を取得しており、これから日本で長期的に生活していくという場合はどうでしょうか。
この場合は、日本国内での在留資格取得申請ではなく、一般的な入国手続きである「在留資格認定証明書交付申請(COE)」を日本側の入管に行うのが基本的な流れとなります。
無事に証明書が交付された後、現地の日本大使館・領事館で査証(ビザ)の発行を受け、日本へ入国することになります。日本人の父または母を持つ外国籍のお子さんであれば、「日本人の配偶者等」などの在留資格を検討していくことになります。
5.重国籍のお子さんの「国籍選択」について
最後に、重国籍となったお子さんの将来的な手続きについて触れておきます。
2022年4月の民法改正(成人年齢の引き下げ)に伴い、国籍法の規定も改定されています。現在の法律では、重国籍となった時期に応じて以下の通り国籍選択の期限が定められています。
- 18歳未満で重国籍となった場合:20歳に達するまでにいずれかの国籍を選択
- 18歳以上で重国籍となった場合:重国籍となった時から2年以内に選択
「国籍の選択は20歳まででいいんだ」と思われるかもしれませんが、出生直後の「国籍留保(3か月以内)」を逃してしまうと、そもそも日本国籍自体が失われてしまいます。「国籍選択」と「国籍留保」は全く別の手続きですので、まずは生まれた直後の届出を最優先で確実に行いましょう。
まとめ
海外でお子さんが生まれた際は、以下の3点について速やかに確認することが大切です。
- お子さんがどの国籍を取得するのか(重国籍になるか)
- 出生届および国籍留保の届出を「3か月以内」に行えるか
- 外国籍として入国する場合、どの在留資格(COE)を申請するのか
国籍や在留資格の手続きは、出生地(国内か海外か)や父母の国籍・婚姻状況によって必要書類や進め方が大きく異なります。直前になって慌てることのないよう、ご心配な点があれば出産前の段階から専門家や関係機関へご相談いただくことをおすすめします。
当事務所でも、国際結婚やご家族の在留資格・各種届出に関するご相談を随時承っております。お気軽にお問い合わせください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
