2026-09-03
はじめに
「経営・管理ビザを取りたいが、修士号も博士号も持っていない」
2025年10月の制度改正以降、このようなご相談は非常に増えています。新たに設けられた「経歴要件」は、これまでの経営・管理ビザの審査基準を大きく変えるポイントです。
では、修士や博士の学位がなければ、もう日本で会社を経営することはできないのでしょうか。
結論から言うと、決してそうではありません。今回は、新しい経歴要件の仕組みと、学位がない場合に考えられる取得への道筋について解説します。
■ 新たに設けられた「経歴要件」の基本ルール
2025年10月16日から施行された新基準では、「経営・管理」ビザを申請する方に対し、原則として次のいずれかを満たすことが求められています。
- 経営・管理に関する分野、またはこれから行う事業分野に関連する「修士・博士相当以上」の学位を有すること
- 経営または管理に関する「実務経験を3年以上」有すること
ここで重要なのは、1の学位については「これから行う事業分野との関連性」が審査される点です。また、学位がない場合でも「3年以上の経営・管理経験」があれば別ルートで要件を満たす道が開かれています。つまり、「学位がない=即申請不可」というわけではありません。
■ 「経営経験」=「社長の経験」だけではありません
注意したいのは、「自分は代表取締役(社長)をやったことがないから、経営経験はない」とすぐに諦めてしまわないことです。
例えば、過去に勤務していた企業で、支店長、店舗責任者、あるいは部門の管理職として以下のような業務を行っていた場合、実務経験として認められる可能性があります。
- 部下の採用、配置、評価などの人事管理を行っていた
- 部門の売上目標や予算の管理を任されていた
- 事業計画の作成や業務プロセスの改善に関わっていた
- 複数の店舗や部署を統括・指揮していた
大切なのは、履歴書に記載された「役職名」そのものではありません。「実際にどのような決裁権限を持ち、組織の管理に関わっていたか」という実態です。単なる現場のシフト管理レベルではなく、一定の意思決定権や統括権限があったかがポイントとなります。
■ 「3年」のカウントと立証の注意点
実務経験の「3年」をカウントする際、一定の「特定活動(起業準備活動)」の期間も経験年数に含めることができます。
ただし、実務経験ルートで申請する際に最も高いハードルとなるのが「客観的な立証」です。
海外や過去の勤務先での管理職経験を主張する場合、単に名刺や「Manager」と書かれた在職証明書を提出するだけでは不十分とされるケースが多くあります。
一般的に実務上では、在職証明書や履歴書に加え、組織図や職務権限規定、当時の管理実績がわかる資料などを合わせ、客観的に「管理職としての実体があった」ことを証明していく必要があります。
■ 学位も実務経験もない場合はどうなる?
修士相当以上の学位がなく、3年以上の経営・管理実務経験もない場合、新しい基準のもとで「経営・管理」ビザを取得することは容易ではありません。
以前のインターネット記事などには「資本金500万円を用意して会社を作ればビザが取れる」といった解説が多く見られましたが、現在は要件が大幅に厳格化されています。
これまでは「資本金500万円以上 または 常勤職員2人以上」という選択制(OR要件)でしたが、新基準では「資本金等3,000万円以上」かつ「常勤職員1人以上」の両方を満たす必要(AND要件)があります。さらに、申請者本人の日本語能力(日本語能力参照枠B2相当/JLPT N2目安)も求められるなど、ハードルは格段に上がっています。
■ まずは「自分には経験がない」と諦めずに整理を
今回の改正により、これからの「経営・管理」ビザ申請では、会社設立や事務所契約といった手続きを進める「前」に、申請者ご自身の経歴を正確に審査基準へ照らし合わせることが不可欠となりました。
「社長ではなかった」「大学院を出ていない」という理由だけで諦める必要はありません。過去の職務内容や与えられていた権限を丁寧に見直し、客観的な資料で証明できるかを整理することで、申請に活用できる経歴が見つかることもあります。
■ まとめ
新しい「経営・管理」ビザでは、原則として「関連分野の修士・博士学位」または「3年以上の経営・管理実務経験」が求められます。
修士・博士がないからといって直ちに道が閉ざされるわけではありませんが、実務経験で申請する場合は「管理職としての実態」を客観的資料で証明する高度な準備が必要です。
当事務所では、これまでのご職歴やこれから予定されている事業内容を詳細にヒアリングし、新しい基準に適合するかどうか、どのような立証書類が必要になるかを個別に確認・サポートしております。日本での起業・経営をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
