はじめに
「先生、うちの会社、今期は赤字になっちゃいました……ビザの更新、もうダメですよね?」
決算時期を終えた外国人社長から、絞り出すような声でいただくご相談です。手元の決算書に並ぶ「赤字」の文字を見て、夜も眠れなかったとおっしゃる方も少なくありません。
ですが、まずはお伝えしたいことがあります。「赤字になった=即ビザ不許可」ではありません。
入管が見ているのは、単なる黒字・赤字という結果だけではないのです。今回は、入管が決算書の「どこ」をどうチェックしているのか、現場の実務目線で分かりやすく解説します。
入管が本当に見ているのは「事業の継続性」
出入国在留管理庁の審査ガイドラインにおいて、経営・管理ビザの更新で最も重視されるのは「今後もその事業を安定して続けていけるか(事業継続性)」です。
そのため、たとえば次のような投資や一時的な理由による当期純損失(赤字)であれば、それだけで事業継続性が否定されることはありません。
- 新店舗のオープンや最新設備の導入で大きな費用がかかった
- 事業拡大のために従業員を増やし、人件費が膨らんだ
- 新商品や新サービスの開発・広告に資金を集中投下した
特に、本業での稼ぐ力を示す「売上総利益(粗利益)」がしっかり出ており、過去の利益の蓄積によって繰越欠損金が生じていない状態であれば、今期が赤字であっても十分に挽回可能です。
赤字よりもずっと怖い! 真の警戒対象は「債務超過」
決算書を開いたとき、多くの方は損益計算書(売上や利益)の赤字ばかりに目を奪われがちですが、審査官が最も警戒するのは貸借対照表における「債務超過(会社の負債が資産を上回っている状態)」です。
債務超過に陥ってしまうと、審査のハードルは格段に上がります。
- 1期目の債務超過:1年以内に解消できる合理的な見通しが必要です。中小企業診断士や公認会計士といった第三者の専門家による「事業継続性に関する評価書」や明確な改善計画書を添えて提出することで、許可を引き寄せます。
- 2期連続の債務超過:入管からは「事業継続性に著しい問題あり」と判定され、不許可のリスクが跳ね上がります。
単なる決意表明はNG! 「赤字の理由」と「客観的データ」で勝負する
赤字や債務超過の状態で更新に臨む場合、「次は絶対に黒字にします」という根拠のない抱負を理由書に書いても、審査官には一切響きません。
求められるのは、次の2つを客観的証拠とともに示すことです。
- なぜ赤字になったのかという合理的理由(一時的な投資、取引先変更などの背景)
- 数字で裏付けされた今後の事業計画と資金繰り
「すでに結んでいる新規取引の契約書」「具体的なコスト削減案」「今後1〜3年の収支見通し」など、入管が「これなら来期は持ち直すな」と納得できる材料をこちらから提示する必要があります。
2025年改正と「直近2期分」の決算比較
入管の審査では、単年度の数値だけでなく「直近2期分の決算書」がセットで確認されます。前期から今期にかけて会社がどう変化しているのか、トレンドが見られているのです。
なお、2025年10月に行われた基準改正(資本金や雇用要件の厳格化等)に伴い、すでに経営・管理ビザをお持ちの方には2028年10月16日までの経過措置(3年間の猶予期間)が設けられています。
ただし、「経過措置があるから安心」と油断してはいけません。新基準の適用が猶予されているだけであって、「決算内容に基づく従来の事業継続性審査」は通常通り厳しく行われているからです。
おわりに
赤字決算だからといって、諦めて会社をたたむ必要はありません。
大切なのは、自分の会社の決算書を冷徹に分析し、「売上総利益はあるか」「債務超過になっていないか」「入管を納得させる改善計画を出せるか」を把握することです。
決算書が確定した段階で何の対策も打たずに申請を出し、不許可になってから焦っても手遅れになりかねません。
当事務所では、外国人経営者様の決算書を財務面から分析し、不許可リスクの診断から入管提出用の改善計画書・専門家評価書の手配までトータルでサポートしております。「うちの決算書で更新できるか見てほしい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。社長の挑戦が日本で続くよう、一緒に出直しの一手を打ちましょう。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
