はじめに
「大学を卒業していません」
「これまで社長や役員をしたこともありません」
それでも、日本で会社を設立して事業を始めたいという外国人の方は少なくありません。結論から言えば、「社長になったことがない=即アウト」ではありません。
しかし、2025年10月の基準改正により、経営者本人の「経歴」はこれまで以上に厳しい審査対象となっています。今回は、見落とされがちな「経歴要件」に絞ってわかりやすく解説します。
「学歴がない」だけで諦める必要はない
現在の「経営・管理」ビザでは、申請人本人について原則として次のいずれかを満たすことが求められます。
- 【学歴】 経営管理に関する分野、またはこれから行う事業に必要な技術・知識に係る分野での博士・修士・専門職学位の取得(※無関係な分野の学位や、通常の学士・大学卒だけでは対象外)
- 【職歴】 事業の経営または管理に関する3年以上の経験(※「特定活動(起業準備活動)」での在留期間を含む)
ここで注意したいのは、「4年制大学(学士)を出ていないからダメ」「社長の経験がないからダメ」と安易に諦める必要はないということです。
「社長経験なし」でも「管理経験」があるかもしれません
たとえ会社の社長や役員を務めたことがなくても、会社組織の中で「管理者」としての経験があれば要件を満たせる可能性があります。
入管の実務上、単なる肩書きだけでなく、次のような業務への関与実態から総合的に「管理経験」にあたるかが判断される傾向にあります。
- 支店や店舗の責任者として店舗運営を任されていた
- 部下の採用、シフト管理、人事評価を行っていた
- 事業計画の作成や重要な意思決定に関わっていた
- 部門の予算管理や売上目標の策定を担当していた
入管が評価するのは「社長」という名目だけではありません。実際にどのような役割を果たし、どの程度組織の管理に関わっていたかという「実態」です。
自称「営業職」の方でも、詳しくヒアリングすると数名の部下を率いて目標管理を行っていたケースは珍しくありません。これを単なる「営業経験10年」と申告してしまうのは、非常にもったいないことです。
本当に「学歴」も「管理経験」もない場合は?
一方で、関連分野の修士以上の学位もなく、経営や管理の経験(通算3年以上)も全く証明できない場合、現在の制度下ではビザの取得が極めて厳しくなっています。
以前のように「とりあえずお金を用意して会社を作れば申請できる」という時代は終わりました。
2025年10月16日以降の基準では、経歴要件に加え、「資本金等3,000万円以上」「常勤職員1名以上の雇用」「経営者または職員の日本語能力」「専門家による事業計画の評価」などが必須とされています。
会社を設立することと、行政から「経営・管理」の在留資格が許可されることは全く別の問題です。
まずは自分の「職歴」を細かく整理しよう
これから日本での起業を検討されている方は、会社設立や事務所契約を急ぐ前に、まずご自身の経歴を正確に整理することをおすすめします。
- 過去の勤務先での正確な役職・職務内容
- 直属の部下が何人いたか
- 予算設定や人事、意思決定への関与の度合い
これらをひとつずつ掘り下げることで、「自分には無理だ」と思っていた方でも、立証可能な「管理経験」が見つかるケースがあります。
まとめ
「学歴がない」「社長をやったことがない」という理由だけで、直ちに可能性がゼロになるわけではありません。
しかし、改正後の「経営・管理」ビザでは、申請者自身の経歴証明が合否を分ける極めて重要な要素となっています。お金や事務所を準備してしまう前に、自分の経歴が現在の審査基準でどう評価されるのかを正しく把握することが大切です。
当事務所では、これまでの職歴や担当業務を丁寧にヒアリングし、新基準に照らして「経営・管理」ビザの要件を満たせるか、どのような立証資料が必要かを個別に診断しております。「自分も対象になるか知りたい」「起業の準備をどう進めればいいか分からない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
