はじめに
「海外から選手を招いて、日本で試合やイベントをしてもらいたい」
国際的なスポーツ大会や試合が増える中で、外国人選手の入国手続きについてご相談を受ける機会も増えています。
「スポーツ選手だから短期滞在で来日できるだろう」と考えがちですが、日本で報酬を得て試合に出場したり競技を行ったりする場合、話はそれほど単純ではありません。
今回は、外国人スポーツ選手が仕事として日本で競技を行う場合の在留資格について、実務上のポイントを整理して解説します。
プロスポーツ選手なら、基本は「興行」
出入国在留管理庁の在留資格一覧を見ると、「興行」は演劇や演奏だけでなく、スポーツ等の興行に係る活動も対象とされています。そして、具体的な該当例として「プロスポーツ選手」が明記されています。
したがって、海外のプロスポーツ選手が日本のチームや興行主催者などとの契約(選手契約や業務委託契約など)に基づいて試合に出場し、その活動によって報酬を受ける場合には、原則として「興行」の在留資格を検討することになります。
ここでいう「興行」は、単に「イベントに参加する」という意味ではありません。外国人選手が日本でどのような活動をするのか、誰と契約するのか、報酬はいくらなのか、どのくらいの期間滞在するのかといった具体的な事情を踏まえて厳格に審査されます。
「短期滞在」で試合に出ることはできる?
ここは非常に誤解されやすいポイントです。
観光や親族訪問などを目的とする「短期滞在」は、原則として日本国内で報酬を得て仕事をするための在留資格ではありません。そのため、「試合は数日だけだから短期滞在でいい」とは、単純に判断できません。
例えば、海外のプロ格闘家や選手が日本の大会に出場し、主催者からファイトマネーや出演料などの確約された対価(報酬)を受け取るケースでは、滞在日数が数日であっても「短期滞在」ではなく就労可能な在留資格(興行など)が必要になります。
「何日滞在するか」ではなく、「日本でファイトマネーや報酬などの対価を受け取る活動をするのかどうか」が重要な判断基準となります。
アマチュア選手は「特定活動」になることも
一方、プロではなくアマチュアスポーツ選手の場合は別の制度が用意されています。
出入国在留管理庁は、「特定活動」の対象となる活動の一つとして、「アマチュアスポーツ選手及びその家族」を挙げています。
ただし、一般のアマチュア選手が単に観光ついでに試合へ出るというわけではなく、実務上は「日本の企業や実業団チーム等に雇用・所属し、一定の報酬を得てアマチュアスポーツの公式大会等に出場する場合」などが対象となります。
同じ「スポーツ選手」であっても、プロ選手とアマチュア選手では検討する在留資格が異なるため、安易に「アマチュアだから短期滞在で大丈夫」と考えるのは禁物です。
「スポーツ指導者」は別の在留資格になる場合も
選手ではなく、外国人が日本でスポーツの指導をする場合にも注意が必要です。
出入国在留管理庁の在留資格一覧では、「技能」の該当例として「スポーツ指導者」が挙げられています。
例えば、海外で実績のあるコーチや監督を日本のチームやスポーツクラブが招き、継続的に指導業務を行ってもらうケースでは、「興行」ではなく「技能」に該当する可能性があります。
なお、「技能」の取得には、原則としてスポーツの指導に係る3年以上の実務経験(または国際大会への出場経験等)が求められるなど、一定の要件を満たす必要があります。
同じスポーツ関係者であっても、
- 選手なのか、指導者なのか
- プロなのか、アマチュアなのか
ここを最初に整理することが極めて大切です。
申請では「誰が、何をするのか」を明確に
外国人選手を日本に招く際、「選手のパスポートだけあれば手続きできますか?」とご質問を受けることがあります。しかし、実際の在留資格申請ではそれだけでは足りません。
- 誰が選手を受け入れるのか(受入機関の体制)
- どの大会・試合に出場するのか
- 活動期間はいつからいつまでか
- 契約関係や報酬の金額はどうなっているのか
これらを具体的な資料(契約書や大会要項など)によって説明する必要があります。また、試合日程が決まっている場合には、在留資格の審査期間(通常数週間〜数ヶ月)も見越して早めに準備を進めることが重要です。
まとめ
外国人スポーツ選手が日本で活動する場合、「スポーツ選手だからこのビザ」と一律に決まるわけではありません。
- プロスポーツ選手として日本で興行に参加する =「興行」
- 実業団等で活動する一定のアマチュアスポーツ選手 =「特定活動」
- スポーツ指導者として活動する =「技能」
活動内容によって検討すべき在留資格は大きく変わります。特にプロ選手については、「数日間の試合だから短期滞在でよい」と安易に判断せず、報酬を伴う活動であるかを真っ先にご確認ください。
外国人選手を日本の大会やチームへスムーズに招きたいとお考えの主催者様や関係者の方は、契約内容や報酬、滞在期間などを整理したうえで、ビザ申請の専門家である行政書士へお気軽にご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
