はじめに
「祖父母や親が日本人なのですが、日本で暮らすことはできますか?」
日系人の方やそのご家族から、このようなご相談を受けることがよくあります。
日本人の子孫である場合、「定住者」の在留資格に該当して日本に住むことができる可能性があります。特に日系2世・3世については、法務省が定める「定住者告示」の3号や4号が重要なポイントとなります。
今回は、日系人が「定住者」ビザを取得するための仕組みと、最新の法制度について分かりやすく解説します。
「定住者」はどのような在留資格?
「定住者」とは、法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して日本での居住を認める在留資格です。
「日本人の配偶者等」とは異なり、定住者は日本人の子孫であることなど、一定の身分関係を基礎として認められます。
最大のメリットは、原則として就労制限がないことです。
学歴や職歴の要件を満たす必要がなく、工場での作業、飲食店、事務職、IT関連など幅広い職種で働くことができ、転職も自由に行えます。
告示3号と4号の違い(2世と3世の区分)
日系人の定住者ビザでは、「誰が日本人だったのか(世代)」によって該当する告示の番号が分かれます。
告示3号:日系2世(元日本人の実子)が対象
告示3号は、「日本人の子として出生した人の実子」を対象としています。
代表的な例が、かつて日本人だった親が海外に移住して外国籍を取得(日本国籍を離脱)した後に生まれた子ども、つまり「日系2世」です。
告示4号:日系3世(日本人の孫)が対象
告示4号は、「かつて日本国民として本籍を有していた人の実子の実子」を対象としています。
つまり、日本人の孫にあたる「日系3世」が該当します。
※実務上、祖父母や親が「いつ国籍を離脱したか」「出生時に婚姻関係があったか」など世代ごとの身分関係を戸籍や公的証明書で厳密に確認して、3号か4号かを判定します。なお、どちらの告示においても「素行が善良であること(犯罪歴がないこと等)」が共通の要件とされています。
海外に住む日系人も日本へ呼び寄せられる
現在海外に住んでいる日系2世・3世を日本に呼び寄せることも可能です。
日本に住んでいない日系人が入国する場合は、あらかじめ日本にいる親族や行政書士などが代理人となって、入管へ「在留資格認定証明書交付申請(COE申請)」を行います。
無事に交付された後、現地の日本大使館・総領事館で査証(ビザ)の発給を受けて日本へ入国する、という流れになります。
日系人の配偶者も「定住者」になれる(告示5号)
日系2世・3世本人だけでなく、その配偶者(外国人)についても、一定の条件を満たせば「定住者(告示5号)」の在留資格が認められます。
ただし、単に婚姻届を出しているだけでは不十分です。
- 実態のある婚姻生活(同居し、相互に協力・扶養していること)が営まれていること
- 日本で安定して暮らしていくための生計維持能力(収入や資産)があること
などの実態が厳密に審査されます。
【重要】日系4世の扱いはどうなる?(2023年12月改正の最新ルール)
「日系4世も定住者になれますか?」というご相談も増えています。
原則として、定住者告示(3号・4号)で直接受け入れられるのは「日系3世まで」です。
日系4世については、原則として「特定活動(日系4世受入制度)」という別の制度を利用することになります。以前はこの制度で最長5年しか在留できず、帰国が前提とされていました。
しかし、2023年12月の制度改正によりルールが緩和されました。
日系4世として5年間日本に良好に在留し、日本語能力試験N2相当に合格するなどの要件を満たせば、「定住者」への変更申請が可能となりました。定住者へ変更できれば、在留期間の更新に上限がなくなり、将来的に「永住者」の許可を目指すことも可能になっています。
申請で最も重要なのは「身分関係の証明」
日系人の定住者申請において最も重要なのは、「自分が日本人の子孫であること」を公的文書で完璧に証明することです。
日本の戸籍謄本だけでなく、現地国での出生証明書、婚姻証明書、国籍離脱証明書などを出生から現在まで一つずつ辿って提出する必要があります。
特に海外で世代交代が進んでいるケースでは、書類の収集や家系図の作成など事前準備が非常に複雑になります。
まとめ
日系2世・3世の方には、血統関係を理由として就労制限のない「定住者」ビザが認められています。
【ポイントの整理】
- 告示3号=日系2世(元日本人の子)、告示4号=日系3世(日本人の孫)が対象
- いずれも「素行善良であること」や「日本での生計維持能力」が必要
- 海外からの呼び寄せは「在留資格認定証明書(COE)」の手続きを行う
- 日系人の配偶者も「定住者(告示5号)」として認められる可能性がある
- 日系4世は「特定活動」で入国後、要件(N2合格等)を満たせば「定住者」へ変更可能(2023年12月改正)
日系人のビザ申請は、家族の歴史(国籍変遷・戸籍)を紐解く作業が必要です。「自分や家族はどの告示に該当するのか」「必要な書類は何か」とお悩みの場合は、まず家系図と家族の国籍の経緯を整理したうえで、専門家に相談することをおすすめします。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
