はじめに
「特に悪いことはしていないのに、なぜ在留資格が取り消されるのでしょうか?」
当事務所には、このようなご相談が寄せられることがあります。
実は、在留資格の取消しは「悪質な不正行為」が原因とは限りません。日常生活の中で届出を忘れてしまったり、仕事や学校での活動が止まったままになってしまったりと、何気ない状況がきっかけとなるケースも少なくありません。
今回は、出入国在留管理庁が公表した最新の統計をもとに、在留資格取消しの実態と、日頃から気を付けたいポイントについて解説します。
在留資格の取消し件数は過去最多の1,446件
出入国在留管理庁が令和8年3月27日に公表した資料によると、令和7年に在留資格を取り消された件数は1,446件となり、前年より262件(22.1%)増加しました。統計開始以来、過去最多となっています。
在留資格別の内訳は次のとおりです。
・技能実習:973件(67.3%)
・留学:343件(23.7%)
・技術・人文知識・国際業務:63件(4.4%)
技能実習が全体の約7割を占めていますが、留学生や会社員として働く外国人にも取消し事例が発生していることが分かります。
最も多い理由は「3か月以上活動していないこと」
取消し理由として最も多かったのは、入管法第22条の4第1項第6号に規定されている、「在留資格に応じた活動を正当な理由なく3か月以上継続して行っていない場合」で、999件と全体の69.1%を占めています。
例えば、次のようなケースが該当する可能性があります
・退職後、転職活動を行わないまま長期間在留している
・留学生が正当な理由なく学校へ通っていない
・長期間欠席や欠勤を続け、在留活動の実態がなくなっている
特に注意したいのは、学校へ休学届を提出していても、それだけで入管法上の「正当な理由」が認められるとは限らないという点です。
活動を行っていない事情について合理的な理由が認められなければ、取消しの対象となる可能性があります。
本来の活動をせず別の活動を行うケースも多数
次に多かったのが、入管法第22条の4第1項第5号に該当するケースです。
これは、「本来認められた在留活動を行わず、別の活動を行っている、または行おうとしている場合」で、350件(24.2%)ありました。
例えば、
・資格外活動許可を受けずにアルバイトや副業を続けている
・本来の就労活動を行わず、別の仕事を中心に行っている
といったケースが考えられます。
一方で、上陸許可時の虚偽申告など、いわゆる悪質な不正行為(同第2号)は48件(3.3%)にとどまっています。
統計を見る限りでは、「悪意のある不正」よりも、「本来行うべき活動をしていない状態」が取消しにつながるケースの方が圧倒的に多いことが分かります。
すぐに退去強制になるわけではない
5号・6号に該当した場合でも、直ちに退去強制となるわけではありません。
実務上は、まず入国審査官による意見聴取が行われ、活動を行っていなかった理由や事情について説明する機会が設けられます。
病気や会社都合による退職など、活動ができなかったことについて入管法上の「正当な理由」が認められれば、取消しを免れる可能性があります。
そのため、
・転職活動が長引いている
・休職や療養で仕事ができない
・留学先を変更する予定がある
といった事情がある場合は、そのまま放置せず、早めに状況を整理することが重要です。
必要に応じて在留資格の変更や更新など、適切な手続きを検討することで、取消しのリスクを回避できる場合があります。
「うっかり」が在留資格取消しにつながる時代
在留資格の取消しというと、重大な違反や悪質な不正をイメージされる方も多いでしょう。
しかし実際には、
・転職活動が長引いてしまった
・体調不良で学校を休み続けていた
・在留活動が止まったまま何もしなかった
といった身近な事情が、取消しにつながるケースが少なくありません。
重要なのは、「活動していない状態」を漫然と放置しないことです。
まとめ
今回の統計から分かるのは、在留資格の取消しは決して特別な人だけに起こるものではないということです。
在留資格に応じた活動を継続しているか、活動内容が現在の在留資格に適合しているかを定期的に確認し、状況が変わった場合には早めに対応することが大切です。
「このまま日本に滞在していて問題ないのだろうか」「転職や休学を予定しているが在留資格への影響が心配」といった不安がある場合は、自己判断せず、早い段階で行政書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
