例外的に認められる「やむを得ない特別の事情」とは
海外から日本へ来られる方の中には、「まず短期滞在で来日し、その後、日本で就労ビザや配偶者ビザへ変更したい」と考える方も少なくありません。しかし、結論から申し上げると、短期滞在(いわゆる観光ビザ、親族訪問、査証免除等)から他の在留資格への変更は、法律上、原則として認められていません。
このルールは入管行政の基本的な考え方の一つであり、知らずに手続きを進めると、予定していた在留資格への変更が認められないことがあります。
今回は、短期滞在からの在留資格変更が原則認められない理由と、例外的に変更が許可されるケースについてご説明します。
短期滞在とはどのような在留資格?
短期滞在は、観光、親族・知人訪問、商談、会議への参加など、比較的短期間の滞在を目的とする在留資格です。
一般的には15日、30日、90日などの在留期間が付与されますが、この在留資格では、日本に生活の本拠を置くことや、継続的な就労を行うことは予定されていません。
そのため、短期滞在は「あくまでも一時的な滞在」を前提とした制度となっています。
なぜ在留資格変更が原則認められないのでしょうか
出入国管理及び難民認定法(入管法)第20条第3項では、短期滞在から他の在留資格への変更は、「やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しない」と明記されています。
本来、日本に中長期間滞在する目的がある場合には、来日前に在外日本公館(大使館・領事館)で適切な査証(ビザ)の発給を受け、正攻法の手続きを経て入国することが制度の基本だからです。
もし誰でも短期滞在から自由に変更できるのであれば、事前に受けるべき審査を経ずに日本へ入国できることになり、出入国管理の公平性が保てなくなってしまいます。そのため、短期滞在からの変更は非常に限定的な取扱いとなっています。
「やむを得ない特別の事情」とは?
「やむを得ない特別の事情」については法律上に明確な数値基準やリストがあるわけではなく、個々の事情を総合的に審査して判断されます。
実務上、検討の対象となるのは主に以下のようなケースです。
1.日本人や永住者との婚姻(国際結婚)
短期滞在で来日した後に日本人との婚姻が成立し、引き続き日本で夫婦として生活する必要が生じた場合などは、「日本人の配偶者等」への変更が検討されることがあります。
ただし、結婚すれば必ず変更できるわけではありません。婚姻の実態や同居予定、日本での生活基盤、交際経緯なども含めて厳しく審査されます。
2.人道上の配慮が必要な場合や予測不能な事態
・本人の責に帰さない事情で帰国が著しく困難になった場合
・急な病気やケガによる治療の必要性など、人道上やむを得ない理由がある場合
COE(在留資格認定証明書)があっても一度帰国が基本です
よく寄せられるご相談に「在留資格認定証明書(COE)が交付されていれば、短期滞在から変更できるのでは?」というものがあります。
しかし、COEが交付されていること自体は、法律上の「やむを得ない特別の事情」には該当しません。
特に就労ビザや経営・管理ビザなどの活動系の在留資格については、COEが手元にあったとしても、原則として一度本国へ帰国し、現地の大使館・領事館で査証(ビザ)の発給を受けてから再入国する必要があります。
過去や個別の状況によって例外的に対応されたケースが見られることもありますが、これは明文の規定ではなく入管局ごとの裁量によるものであり、近年は裁量による緩和も非常に厳しくなっています。原則通り「一旦帰国」を案内されるのが実務の基本です。
注意!当初から長期滞在目的での「短期滞在入国」のリスク
査証免除(ノービザ)や短期滞在ビザを利用して入国する際、「本当は日本で就労したり長期滞在したりする目的があるのに、それを伏せて短期滞在で入国する」ことは厳禁です。
申請内容や来日経緯に齟齬があると、入管から「入国目的の偽装(目的外入国)」とみなされ、変更申請が不許可になるだけでなく、今後の在留資格申請全般において著しく不利な扱いを受けるリスクがあります。目的に応じた適切な手順を踏むことが何より重要です。
判断に迷ったら専門家へ相談を
短期滞在から他の在留資格への変更は、通常の在留資格変更よりも制度上のハードルが格段に高く設定されています。
ご自身では「例外に該当する」と考えていても、入管審査の基準では認められないケースが多く存在します。一方で、ご自身の状況がどのような手続きを踏むべきなのか(一度帰国すべきか、他の手段があるか)を正確に把握することで、無駄な申請や不許可リスクを避けることができます。
当事務所では、現在の在留状況や来日目的、ご家族の状況などを丁寧にお伺いし、制度上どのような選択肢が最も安全・確実かを分かりやすくご説明しています。短期滞在からの在留資格変更や来日スケジュールでお悩みの方は、お早めにご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。
