はじめに
「現場で成果を出した外国人社員を取締役に抜擢したいが、ビザを『経営・管理』に変更する必要があるのか?」
企業様からこのようなご相談をよくいただきます。結論からお伝えすると、「取締役に就任したからといって、必ず『経営・管理』ビザに変えなければならない」わけではありません。入管がチェックするのは、登記簿上の肩書きではなく「その人が実際に何をするのか(活動の実態)」だからです。
判断の分かれ目は「現場業務」か「経営統括」か
これまで「技術・人文知識・国際業務(技人国)」で働いていたエンジニアが取締役に就任した場合を考えてみましょう。
役員就任後も主な業務がシステムの設計・開発であり、時間の大部分を現場作業に費やしているのであれば、ビザを変更する必要はありません。「技人国」の範囲内の活動を主として行っていると評価され、今のビザのままで適法に役員を兼任できます。
一方、現場を離れて事業計画の策定、融資交渉、人事権の行使など「会社全体の経営・統括」がメインになる場合は、「経営・管理」ビザへの変更手続が必須となります。
【重要】ビザ変更が不要でも「14日以内の届出」は必須
実務上で最も多い落とし穴が「入管への届出」の忘れです。
「技人国のままで問題ない」と判断した場合でも、登記簿上の役員に就任した以上、本人は就任から14日以内に入管へ「所属機関に関する届出」を提出する義務があります。
これをつい忘れてしまい、数年後のビザ更新時に「なぜ届出を出していないのか」と指摘され、審査がストップするケースが後を絶ちません。肩書きが変わったら、まずは2週間以内の届出手続が必要です。
経営・管理ビザへの変更時に注意すべき要件
「経営・管理」へ変更する場合は、日本人役員と同等以上かつ独立して生活できる役員報酬(月額20万円以上が目安)の設定が求められます。
また、近年の入管法の運用(2025年10月改正等)により、企業側の社会保険・税金の適正納付(公租公課の遵守)が厳格に審査されます。会社側の労務不備のせいでビザが不許可になるトラブルを防ぐため、事前の社内労務チェックが欠かせません。
事前チェックリストとご相談
役員就任が決まった際は、以下をご確認ください。
1.実務内容は現場の作業がメインか、会社経営の統括か
2.技人国のままいく場合、14日以内に「所属機関に関する届出」を出す準備があるか
3.経営・管理へ変える場合、十分な役員報酬が設定されているか
4.会社側に社会保険や税金の未納・滞納がないか
「役員になったから変更が必要」という思い込みも、「現場のままだから何も手続しなくていい」という放置もリスクとなります。手続を進める前に、ぜひ当事務所へご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・公表情報に基づいています。実際の申請手続にあたっては最新の出入国在留管理庁の情報をご確認いただくか専門家へご相談ください。
